特性関数の定義
確率変数 X に対して, 特性関数 ϕX:R→R を
ϕX(t)=E[e−1Xt],t∈R
により定める.
特性関数は連続関数
任意の t,h について,
∣ϕX(t+h)−ϕX(t)∣≤E[∣∣∣e−1hX−1∣∣∣]
であり, 任意の x に対して ∣e−1tx−1∣→0 であることから, 優収束定理により右辺は 0 に収束する.
特性関数の性質1. 反転公式
確率変数 X の分布 FX から特性関数 ϕX を構成したのに対して,
関数 ϕX から分布 FX を対応付けることができる.
これを反転公式という.
離散分布の場合
実現値が整数のみとなる離散分布の場合, 次のような反転公式が成り立つ.
任意の k∈Z について,
pX(k)=2π1∫−ππe−−1ktϕX(t)dt.
証明
整数 j,k について
2π1∫−ππe−−1(k−j)tdt=δj,k
であることに注意すると, 直接計算により,
2π1∫−ππe−−1ktϕX(t)dt=2π1j=0∑∞∫−ππe−−1kte−1jtpX(j)dt=j=0∑∞δj,kpX(j)=pX(k)
連続分布の場合
確率変数 X の特性関数 ϕX が絶対可積分であるとする.
このとき, X の確率密度関数 fX について次の反転公式が成り立つ.
fX(x)=2π1∫Re−−1xtϕ(t)dt
証明
右辺の被積分関数に収束因子 e−εt2, ε>0 をかけた積分
fε(x)=2π1∫Re−−1xt−εt2ϕ(t)dt
を計算しよう. まずは特性関数の定義により
fε(x)=2π1∫e−−1xt−εt2∫e−1ytf(y)dydt
であり, 2重積分の被積分関数は t を固定するごとに y について絶対値は可積分であり,
さらに収束因子の存在から t についての積分も可積分である.
したがってフビニ・トネリの定理により, 積分順序の交換ができ,
fε(x)=2π1∫e−−1xt−εt2∫e−1ytf(y)dydt=∫(2π1∫e−εt2−−1(x−y)tdt)f(y)dy=∫4πε1exp(−4ε−∣x−y∣2)f(y)dy→f(x),as ε→0
である. ただしここで,
2π1∫e−εt2−−1(x−y)tdt=4πε1exp(−4ε−∣x−y∣2)
であることとこれがデルタ関数 δx(y) に収束することを用いた.
一方, 任意の x∈R を固定するごとに e−−1xt−εt2ϕ(t)≤∣ϕ(t)∣ と ϕ∈L1 であることから,
優収束定理により
fε(x)→2π1∫e−−1xtϕ(t)dt
が成り立つ.
以上により反転公式が示される.
特性関数の性質2. 和の分布が積に
2つの確率変数 X, Y が独立であるとする. このとき,
ϕX+Y(t)=ϕX(t)ϕY(t),t∈R
が成り立つ.
さらに, n 個の確率変数 X1,X2,⋯,Xn が互いに独立であるとする.
このとき, Z=X1+X2+⋯+Xn と表したとき,
ϕZ(t)=i=1∏nϕXi(t),t∈R
が成り立つ.
応用例: ベルヌーイ分布の和が二項分布になること
互いに独立な確率変数 X1,X2,⋯,Xn が同一の分布
FX(x)=⎩⎪⎨⎪⎧0,1−p,1,x<0,0≤x<1,1≤x
に従うものとする.
このとき, 和 Z=X1+X2+⋯+Xn の特性関数 ϕZ は
ϕZ(t)=i=1∏nϕXi(t)=(pe−1t+(1−p))n=k=0∑nnCkpk(1−p)n−ke−1kt.
これより, Z の従う分布の確率質量関数 p は反転公式により,
p(k)=nCkpk(1−p)n−k,k=0,1,⋯,n
である.
このような確率質量関数 p を持つ確率変数を二項分布と呼ぶ.